Akira Higashi

「学校・アート・出会いプロジェクト」2019年の記録

2021.05.12

作家活動の記録

京都府主催「文化を未来に伝える次世代育み事業」(学校・アート・出会いプロジェクト)
※この事業の概要を一番下に記載しています。

実施校:京都府立八幡支援学校
対象:小学部児童約40名
2019年9月10日(作品体験と工作ワークショップ)
2019年11月8日、9日(文化祭に参加)

京都府主催の文化事業「学校・アート・出会いプロジェクト」に登録作家として参加した最初の年、京都府八幡市の支援学校からワークショップの依頼をいただき、工作と作品体験を実施しました。今後この事業や私の作家活動の活用を検討される方の参考になるよう実施内容や準備の詳細を紹介します。

《打ち合わせ》
京都府ホームページの参加作家一覧?から私を選んでいただけた学校があるとのこと、4月中旬に京都府から郵送で連絡あり。現代美術分野の得体の知れない作家をチョイスする、本当にありがたいことです。実施は秋をご希望ですがまずは下見と打ち合わせのため学校にお邪魔しました。小学部統括主事の先生と教務部の先生から八幡支援学校の児童生徒の構成や教育のことなどの説明を受けました。車椅子の子どもや知的障がいの子どもがいること、”遊び”を中心として様々なことを学んでいること、などなど。普段トランポリンなどの運動に使っているプレイルームという教室がパラフーク体験に最適で一安心。パラフークは風に弱いので屋内が適しています。欲を言えば床がパンチカーペットだと最高。基本的に靴は脱いで体験します。工作をする場所は先生のお勧めに従い廊下の角にある広いスペースを使うことに。やはり事前に現場を見ることは大事ですね。

《なにをしようかな》
どんな活動をするか?、それはあらかじめ実施プログラム案を京都府 HPに掲載していたのでほぼ決まっていたわけではありますが、もちろん実施校の状況や要望に沿って変更することは可能です。2019年の私のプログラム案は、膨らむ服の作品パラフークを使ったアート体験と工作ワークショップの二本立て、もしくはそのどちらか一つというものです。八幡支援学校には肢体に不自由を持った車椅子の子どももいます。先生方から全ての子どもたちが体験できるものにして欲しいというご要望をいただきました。車椅子の方でもパラフーク体験が可能なことは国立新美術館で開催したワークショップ(下の画像)の際に確認済みです。工作は誰でも簡単に活動できるという理由で紙の帽子工作を提案。これは以前保育園年中さんのレクリエーションで実施したこともあります。大人がサポートする必要もありますが、ちょっとアレンジするだけでその人らしい帽子ができます。というような感じで活動内容はスムーズに決まりました。

《準備、準備、準備》
ワークショップは準備が命!。準備で成否が決まります。パラフークは何着か新しく制作し、あとは会場にハンガーラックの代わりになる棒があればOK。何度も実施しているので現場で起こり得ることも想像できます。紙の帽子工作に関してはいつもより慎重かつやり過ぎなくらいに準備を行いました。身体を動かすことができない子どもや集中が続かない子どもたちにも楽しんでもらいたい。そこで帽子のベースになる骨組みは予めこちらで製作することに。しかもキャップ型とハット型の二種を全員分!!。普段のワークショップではベースを作るところから活動します。その時点で個性が出たり違ったやり方を思いついたりもします。しかし今回はほんの少しアレンジするだけでその人らしい作品になるプログラムにする必要があります。準備するベースは白いキャンバスのようなつもりで真っ白な画用紙で製作。それぞれ40個、かなりハードでしたが喜んでもらえるなら何のそのです。ベースに貼り付ける部品も予め丸い形や帽子のツバの形に切った紙などを準備。選んで付けるだけで作品になるように。使用する紙は色画用紙の他に美術館のチラシやポスターも使います。派手なもの、お洒落なもの、いろんなデザインがありとても魅力的な素材です。著作権や肖像権は気をつけなければいけないところですが、販売や広く公開することを意図した活動ではないのでギリギリOKと捉えています。

《サポーター》
パラフーク体験、帽子工作ともに私一人で対応できるのは参加者10名前後までです。今回は参加者40名と大人数ですが、グループに分かれて時間差で活動することになりました。パラフーク体験と工作を同時に進行し入れ替わりで活動するので運営が少し難しそうです。当日は先生方が子どもたちに付き添ってくれますが、活動の内容をしっかりと把握したこちら側のサポーターも必要になります。こういった時は大学の後輩や教員時代の教え子に頼みます。今回は3名に協力してもらえることになりました。皆ものづくりや子ども向けワークショップの経験者なので事前講習会などは行わず、プリント郵送で予習してもらうことに。「学校・アート・出会いプロジェクト」のような取り組みがもっと増え、講師がお互いに情報共有したりサポートに入ったりする仕組みができると良いです。

《ワークショップ》
2019年9月10日火曜日、「ふわふわ!わくわく!ふしぎ体験!」というタイトルでワークショップを実施しました。10時に車で学校に到着、30分ほどで会場の設営を行います。パラフーク体験コーナーは天井の棒に紐をくくりつけハンガーラック代わりとし、パラフークをかけます。帽子工作コーナーは机を設置し、材料や用具を置きます。そして壁に参考用の世界の帽子の写真プリントを貼り付けます。10時30分からお昼休みを挟んで14時30分までが本番の活動時間です。参加対象41名の児童がいくつかのグループに分かれて活動します。肢体不自由児8名、高学年15名、低学年①②合わせて18名、の4つのグループです。活動時間はそれぞれのグループで30分と短いもので、最初は二つの活動を30分で行うのは無理があるかと思いましたが、じっとしていられない子ども、初めての人がいると緊張して何もできない子どももいるとのこと、これが適当な時間のようです。そして、一つのグループがさらに二つに分かれ、パラフーク体験と帽子工作を入れ替わりで体験します。それぞれ15分ほど。サポートスタッフ3名が手分けをしてそれぞれのコーナーを担当し、私は両コーナーを行ったり来たり。肢体不自由さんにはそれぞれの子どもに先生が付き添います。


■紙の帽子工作
こちらで準備したキャップ型とハット型の二つから好きな方を選んでもらい、丸い形や帯状の色画用紙などをセロテープやホチキスで貼り付けて行きます。想像以上に子どもたちが自分で材料を選び、貼る位置も決めていて学校の先生方も驚かれていました。肢体が不自由な子どもたちは目の動きや顔の表情でちゃんと意志を伝えてきてくれます。付き添いの先生が代わりに作業するのですが、思い通りのところに貼れると子どもたちの顔が、よしっ!、という表情になり、ちょっとずれていると、うーむ、、という顔になります。
■パラフーク体験
私は目撃できなかったのですが、車椅子の子どもたちがパラフークを着て膨らんで大喜びだったそうです。膨らむと自分の体がフワッとなり、布の動きや空気の流れが普段にない身体感覚を作り出します。身体が柔らかくなり拡張したような変な感覚です。

■工作の材料用具について
材料:色画用紙(予め丸い形や帯状の形に切ってある)、展覧会のチラシ(面白い形に切ってある)
用具:ハサミ、ホチキス、セロテープ、スティックのり
帽子のベースを作るための白い画用紙や飾り付け用の色画用紙、消耗品となるセロテープやホチキスの針などの材料用具は私が準備しました。これらは京都府の予算で購入することができますので費用的には作家側の負担にもなりません。展覧会のチラシも材料として持ち込みましたが、これは私が以前から収集しているものです。廃棄されるよりは工作材料として活用されたほうがチラシも本望でしょう。ハサミやセロテープ台は学校の備品を活用します。木工用ボンドもあると良いのですが、手がベタベタすることを嫌う子どももいるようなので今回は割愛しました。

《たけまつり》
11月8日と9日の二日間、八幡支援学校で開催される文化祭「たけまつり」、なぜ”たけ”なのか聞き忘れましたが、やはり京都の方にとって竹は親しみのある特別な存在なのでしょう。その文化祭の中に「わくわく!ふわふわ!ふしぎ体験!」コーナーを設置し、紙の帽子工作の作品展示とパラフーク体験を実施しました。パラフークは来場した方が誰でも体験できます。支援学校の高校生男子も膨らんで大喜びでした。

 

下記、京都府「文化を未来に伝える次世代育み事業」(学校・アート・出会いプロジェクト)実施要綱より抜粋

(趣旨)
京都府内の児童生徒、及び教員に対し、質の高い文化・芸術を体験する機会を提供することにより、児童生徒の豊かな心を育成するとともに、京都の文化芸術の振興と次世代への継承を図ることを目的とする。

(事業対象)
京都府内の府立高校、府立特別支援学校、小・中学校(京都市立を除く)

(事業内容)
学校がその児童生徒に対し、別表1の文化芸術体験事業を行う場合、京都府は学校等に専門家を講師として派遣し、ワークショップなどを通じて児童生徒及び教員が質の高い文化芸術を体験的に学習できるプログラムを実施する。

リンク:京都府主催「文化を未来に伝える次世代育み事業」(学校・アート・出会いプロジェクト)

 

 

 

 

 

隠れていた風景

2021.02.12

パソコンの中に隠れていたナイロビの眩しい空。

ポートフォリオには使わないけれど、好きなんだよな、という写真があります。

ナイロビのレースコース近くの家具のジュアカリが集まる場所で円錐のパラシュートを飛ばして遊ぶサイモン・アイエンガ氏とそれに興味津々なケニアのおじさんたち。

美術作家・西尾美也氏が主宰する”Nairobi Residence”の派遣作家として、2011年3月にケニアの首都ナイロビに滞在しました。アートセンターや美術館を拠点にするのではなく、各作家が自分の活動に相応しい場所をナイロビ市内に探し出すというなかなかにサバイバルなアーティスト・イン・レジデンス。

私はジュアカリと呼ばれる道端でものづくりをする職人に興味を持ち現地のサポーターの協力のもとリサーチを行いました。その中で家具のジュアカリの店が並ぶエリアを訪れました。道端と言ってもここではお店や工房もあり、道端が家具のショールームになっています。治安が非常に悪いナイロビでもここであれば安心ができる。ものづくりの材料や道具が揃っている。大通りに面しているのでバスで通いやすい。私はここが気に入り、ここで作品を作ることにしました。

何を作ったのかなどはまた別の機会に紹介しますが、上の写真は現地コーディネーターのサイモン氏が家具のジュアカリの場所で”円錐のパラシュート”を飛ばして遊んでいる様子です。円錐のパラシュートに関しては、このジュアカリスペースとは別のプロジェクトとしてナイロビで展開しましたが、そのお話もまた別の機会に。

手の冒険

2021.02.12

 

手がワクワクするというお話です。

ビリビリと紙を破る感触を楽しむ。ペタペタとのりを塗ってペタッと貼る。のりが手についたなあ。画用紙と折り紙の触り心地の違いを無意識に感じ取る。切り紙絵を作る工作では”手”というインターフェイスがフル回転しています。大人の方は絵を描いたり工作をすることに抵抗があるかもしれません。私は長年やっていないし、絵は苦手だし、などなど。何かしら恥ずかしいという思いが付きまとうようです。いわゆる”上手”にできないといけない、という思いがあるのでしょう。しかし、一度手を動かして作り出すと思いのほか制作が進むものです。手を動かすというよりは、手が動き出す、といったほうが良いでしょうか。子どもがドキドキしながら知らないことにチャレンジするのと同じです。

以前関わったワークショップの際、お孫さんに付き添って来られていた年輩のご夫婦に一緒に作ることを勧めたところ、最初は恥ずかしがって避けておられたのですが、思い切って制作を始められました。すると、お孫さんよりも没頭して時間制限も越えて楽しんでおられました。そしてとても嬉しそうに帰っていかれました。

工作は手を使った冒険のようなもので、手がワクワクするものなのです。このコラムコーナーでは、私が考案した工作などのプログラムも公開していきます。